第154回 10月句会 作品、選句、感想、作者
牛
1 湖風(うみかぜ)や石山寺の小紫 【祥雲】
法
2 幕切れはまだまだ先へ桐一葉 【一駒】
祥 法
3 行く秋の村に小さな資料館 【牛郎】
駒
4 ゆく秋や人類は待つ初ワクチン【法被衣】
牛
5 行く秋や与那国島の塩を買う 【歌子】
6 行く秋や馬籠の宿の露天風呂 【祥雲】
7 星と月居場所探して秋の夜 【一駒】
祥 法
8 八幡堀入りたる路地に実むらさき 【牛郎】
駒
9 ほらあれと名を忘れてや式部の実 【法被衣】
10 褒めちぎり紫式部の枝もらう 【歌子】
◎駒 牛 ◎歌
11 赤龍のうねる田畦や曼珠沙華 【祥雲】
歌
12 ゆく秋を見つめた先にまだコロナ【一駒】
祥 ◎法
13 新松子磯風強き安宅関 【牛郎】
◎牛 歌
14 椀の底味噌の雲湧くきのこ汁 【法被衣】
15 朝寒やまずコロナ禍のニュースより【歌子】
16 胡桃割る父の帰りを待ちながら 【祥雲】
17 コンサート紫式部活けにけり 【一駒】
歌
18 四日経て籾殻の火のまだ消ず 【牛郎】
19 いわし雲尽きる果てには夕の富士【法被衣】
駒 ◎祥
20 新米やおむすびだけの朝の卓 【歌子】
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選句 感想
①あらまち一駒選 【4,9,◎11,20】
4 ゆく秋や人類は待つ初ワクチン
感染どうにか止まってくれって祈る気持ち
9 ほらあれと名を忘れてや式部の実
紫式部の名が出てこなくなった気持ちに共感
◎11 赤龍のうねる田畦や曼珠沙華
曼珠沙華の群生を想像させる勢いがある
20 新米やおむすびだけの朝の卓
ホント青天の霹靂なんかもう握り飯だけでいいって位美味い
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②祥雲選 【◎20、3、8、13】
◎20 新米やおむすびだけの朝の卓
光り立つような新米の特徴と喜びが伝わってくる良句です。
3 行く秋の村に小さな資料館
季語にとてもよ良く調和した景が詠み込まれた良句です
8 八幡堀入りたる路地に実むらさき
具体名が入った現実感のある良句です。
13 新松子磯風強き安宅関
新松子が中句、下句に巧く調和した良句です。
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④法被衣選【2、3、8、◎13】
2 幕切れはまだまだ先へ桐一葉
紅葉の中、散らずに目を楽しませてくれる桐の葉への応援歌。
3 行く秋の村に小さな資料館
郷土愛を感じます。
なぜか籾を焼く匂いが甦りました。
8 八幡堀入りたる路地に実むらさき
近江八幡の水郷巡りもgo toしたいと思っていますが、古風な街の散策中に突然現れた鮮やかな紫式部。作者の感動が伝わって来ます。
◎13 新松子磯風強き安宅関
しんちぢり、初めて知りました。句会に参加して得した気分になりました。
安宅関は訪れた事がありませんが、松林に吹き付ける日本海の風や波の音までも聞こえてくるようです。
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⑤歌子選【◎11,12、14、18,】
◎11 赤龍のうねる田畦や曼珠沙華
北国青森では、栽培に持ちこたえてパラパラと数本植えられている曼殊沙華しか見たことがありません。田畦が赤い龍のようにうねっているとは何という迫力のある光景でしょうか。「赤龍のうねる田畦」一度も見たことはないのに、その場所をいま観ているようなきになりました。
12 ゆく秋を見つめた先にまだコロナ
雪解けのころに始まった新型コロナが、不気味に立ちはだかって、いくつもの季節を跨いでいます。コロナよいつまでこの街に居座るのか、去り行く季節とともに、さっさといなくなってくれ、「まだ」にそんな思いが詰め込まれているようです。先の見えない不安と憂えとうんざり感一杯です。
14 椀の底味噌の雲湧くきのこ汁
確かに、あの小さなお椀の中で「雲がわく」に似た様子を見ることがあります。大げさなようですが、椀の底から雲がわくなんて、発想がぶっ飛んでいて面白いなあと思いました。
18 四日経て籾殻の火のまだ消ず
4日たってもまだもえきらないほど籾殻があるということは、それだけたくさんのコメが実ったということでもあるのでしょう。藁焼きの匂いと周囲の煙たい様子が見えるようです。
ふと、米が実れば、必ずでる籾殻、それを燃やしてしまわないで、なにか資源にできないのだろうかと思って検索してみたら、とても生産性のある素晴らしいものが見つかりました。ぜひ広まってほしいと思いました。
https://agri.mynavi.jp/2020_02_21_108903/
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