選 句
番号 |
作品 |
選句【◎は特選】 |
作者 |
1 |
秋茄子の漬けの紫紺を母と愛づ |
法 |
祥雲 |
2 |
ドライブは稲穂の香りまといつつ |
牛 |
法被衣 |
3 |
鰯雲比良の山並み夕映へて |
◎駒 |
牛郎 |
4 |
色淡くたおたおゆるる返り花 |
|
歌子 |
5 |
ほっくりと立つや新米郷の味 |
|
祥雲 |
6 |
台風や来るぞ来るぞとそれていき |
牛 |
歌子 |
7 |
水澄むや杖を伸ばして木橋行く |
祥 |
歌子 |
8 |
豊饒の黄泉の世界や虫すだく |
駒 |
祥雲 |
9 |
虫ちろり菜園の実の薄きかな |
|
歌子 |
10 |
名月と洗濯干して気付く窓 |
◎牛 |
一駒 |
11 |
三世代いて蒸す焼く揚げる秋なすび |
祥 法 |
歌子 |
12 |
秋茄子や素揚げて酢醤油黒光り |
|
一駒 |
13 |
秋茄子や妻にのこれる欲わずか |
駒 |
牛郎 |
14 |
秋茄子に生産者の名道の駅 |
歌 |
法被衣 |
15 |
水澄むや忍野の池の魚の群れ |
歌 |
祥雲 |
16 |
祭日や水澄む朝の庭仕事 |
|
一駒 |
17 |
法 |
牛郎 |
|
18 |
水澄みて猫と目の合う田舎道 |
|
法被衣 |
19 |
台風の牙むき迫る夜の恐怖 |
|
祥雲 |
20 |
台風や日程縮め帰路に着く |
|
一駒 |
21 |
台風のそれし安堵もちょっとの間 |
|
牛郎 |
22 |
台風に夜通し吠えらる日曜日 |
|
法被衣 |
23 |
縄文の遺跡や肥えた虫ばかり |
祥 歌 |
一駒 |
24 |
母の忌の縁者皆去り虫しぐれ |
◎祥 ◎歌 ◎法 駒 |
牛郎 |
25 |
気が付けば世は虫の音の大合唱 |
牛 |
法被衣 |
祥雲選(◎24,7,11,23)
特選
24 母の忌の縁者皆去り虫しぐれ
お母様の忌の縁者が皆去り、虫時雨に気が付く寂寥感溢れる感慨句です。
並選
7 水澄むや杖を伸ばして木橋行く
落ちないように気を付けて、そろそろと杖を伸ばして木橋を渡る時に、
川の水が澄んでいることに気が付く良句。
11 三世代いて焼く揚げる秋なすび
三世代いたら、秋なすびの食べ方の好みもそれぞれだろう。穏やかな家族を彷彿とさせる句。
23 縄文の遺跡や肥えた虫ばかり
縄文の遺跡には餌が豊富なのか、虫が肥えている。縄文の頃の暮らしをも偲ぶ感慨句。
歌子選(◎24,14,15,23)
◎24 母の忌の縁者皆去り虫しぐれ
人々が去った静けさの中で虫時雨。作者に思いを巡らせ、寂しさと悲しみがこみ上げて
きて、しばらくわがことのように泣けました。
14 秋茄子に生産者の名道の駅
いいところに目をつけられました。
農産物もそうですが、最近は海産物でも、肉でも産地や個人名を
目指して買ってくるものが結構増えています。
15 水澄むや忍野の池の魚の群れ
忍野、いったことはありませんが、澄み切った池の水、魚の群れ
が目に見えるようで、実際にその池のほとりにいたような気がしました。
23 縄文の遺跡や肥えた虫ばかり
大事に保護されている縄文遺跡の植物も昆虫も、環境がいいから
肥えているのかしら。近くに三内丸山遺跡があるから、今度行って
確かめてみたくなりました。
法被衣選(◎24、1,11,17,)
◎24 母の忌の縁者皆去り虫しぐれ
葬儀が終わり夜も更けて人気のない部屋でしみじみと亡き母の遺影と向き合っている作者の心情が伝わってきます。
1 秋茄子の漬けの紫紺や母と愛づ
親から伝わるぬか漬けでしょうか。
きれいに漬かったという母子の会話、平和な光景です。
11 三世代いて焼く揚げる秋なすび
台所に佇み忙しく食事の支度、3世代いてあれやこれやの賑やかさが伝わって来ます。
静かな木地師の郷にはどこからか木地を挽く音がこだましているのでしょうか。
恥ずかしながらこの句でトクサという植物と名前が一致しました。
俳句はいろいろ勉強になります。
牛郎選(◎10,2,6,25)
◎ 10,名月と洗濯干して気付く窓
毎日家事に追われて居られる作者の束の間の休息。
2,ドライブは新穂の香りまといつつ
稲刈りの終わった集落は新藁の臭いが充満しています。
6,台風や来るぞ来るぞとそれていき
被害に遭われた地域の方には不埒な発言ですがそれてよかった。
25,気が付けば世は虫の音の大合唱
作者と同じ経験実感しております。
一駒選(◎3,8,13,24】
◎3鰯雲比良の山並み夕映へて
秋ですなが伝わる
8豊饒の黄泉の世界や虫すだく
合掌だね人生万歳
13秋茄子や妻にのこれる欲わずか
嫁に食わすなと言われるほど秋茄子は美味い。老いてか病状悪化か
秋茄子には生を見せるんだなあって感動
24母の忌の縁者皆去り虫しぐれ
人生って儚いよって虫に絆されてる