顧問のいないネット俳句

句会の流れ①その月の兼題を使った俳句を25日必着で投稿します。                     ②ブログに全作品が公開されます。                          ③投稿した人は自分以外の作品番号を選句し3日以内に編集者へ送ります。        ④このあとのことはその後のブログに必要事項を載せます。

萍漂子選  (第25回)

●萍漂子選 【3.8.30.39.70.】



第25回 5句 選句・感想

3.クリスマスやさしき心樹に吊るす

   【感想】

    風景がすんなり思い浮かびます。やさしい気持ちを誰に

    向けているのでしょうか。

    きっと作者はクリスマスに限らず、普段の生活のなかで、

    このやさしさで人に接しているのではないかと思います。




8.色あせた写真に残るゆきうさぎ

   【感想】

    幼き頃、父母に、祖母に作ってもらった雪うさぎ。

    いま、子供や孫に作る機会があるのでしょうか。
 
    現在の自分を軸にして、遠い過去と現在、そして、

    将来を見渡せる時間の広がりを感じます。




30.年の瀬や金管ラッパに映る街

   【感想】

    年の瀬には、東京でも繁華街に救世軍がやってきて、

    社会鍋を吊るし道行く人に喜捨を求めています。

    季節の風物詩と言われますが、昨今の派遣切り、正社

    員切り、派遣村などの新聞記事に接し、暗澹たる気持

    ちになります。
 
    演奏は木枯らしの風の舞う街に流れ、家路を急ぐ人の

    心に沁みわたっていることでしょう。
 
    金管楽器のベルに写る風景は魚眼レンズを通したように

    歪んで演奏者の目に、そして心に映ります。
 
    もしかすると、作者は演奏者なのかも知れません。
 
    今回の中で一番、心惹かれた句でした。




39.除夜の鐘ひとつきいて眠り落ち

   【感想】

    各地の風習はよく知りませんが、「年越し」の準備は大晦

    の朝から、家人が総出でやりました。
 
    その雰囲気は大家族ならではのものでした。
 
    家族が一堂に会し、除夜の鐘を聞きつつ新年を迎え、そして、

    静かに眠りについたものです。
 
    作者は「ひとつきいて」眠りに入っていってしまいます。
 
    その背景にはどのような日常があるのでしょうか。思いが

    ぐります。




70.時を経て夢まぼろしの雪兎 

   【感想】

    この句には<8>の作品とどこか通じるものを感じました。
 
    今となってはすでに「夢まぼろし」とな?しまった雪兎。

    時間の流れのなかに自分の来し方、行く末を雪兎と重ね合わ

    せたファンタジーではないかと思いました。

    さまざまなサイドストーリーがあることでしょう。

    また、生まれてくるような気もします。





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●その他、選句の過程で最後まで<悩んだ句>を挙げさせて頂きます。
 

   【2.15.23.28.40.49.55.】


2.もう寝たかまだだともどる偽サンタ

   【感想】

    私も子供たちが幼い時、偽サンタをやりました。



15.とにかくも飲んで歌えやクリスマス

   【感想】

    この破天荒ぶりは自分のことのようです。



23.弾けたる笑みの赤子やクリスマス

   【感想】

    年中行事に幼子がいることで大人にも未来と喜びが生まれます。



28.捨て去ってなお余りあり百八つ

   【感想】

    今年もまた自堕落な生き方の自分に後悔することばかりです。



40.独り酒聞くともなしの除夜の鐘

   【感想】

    私の住まいでは、幾つかの寺の鐘が聞こえてきます。



49.雪つぶて南天埋めて雪うさぎ

   【感想】

    かつて、小学校の先生が…「大怪我をするから石を入れては

    いけません」と。



55.雪うさぎあしたは残す笹の耳

   【感想】

    雪うさぎのメタモルフォーゼは、残った笹が作者の心と連動

    しているのかも。




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今回は、「クリスマス」が身近なテーマで着想しやすかったです。

「かね」と「雪うさぎ」はとても難しいと思いました。

以上です。


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感想については、皆様の句への理解が浅く、思い違いや失礼がありまし

たならばお許し下さい。歌子様には、毎回の作業が大変なことと思いま

すが、どうぞ、よろしくお願いいたします。




歌子様はじめ、会員の皆さまには今年は大変お世話になりました。

皆さまどうぞ良いお年をお迎え下さい。

有り難うございました。               萍漂子

















●萍漂子(ひょうひょうし)の作品

9 若き親人に見せたいクリスマス  【萍漂子】

11 電飾の窓がきらめくクリスマス  【萍漂子】

12 クリスマスケーキ求めた遠き日々 【萍漂子】

13 靴下の綻び繕うクリスマス  【萍漂子】

18 還暦を過ぎて一人のクリスマス  【萍漂子】

19 クリスマス孫もなければ歌もなし 【萍漂子】

20 クリスマス団欒の声を遠く聞く  【萍漂子】 

21 寺の庭子らが集いてクリスマス  【萍漂子】

25 騒がしい俄信者のクリスマス  【萍漂子】 

26 クリスマスコンビニで聞くカンタータ 【萍漂子】

35 煩悩を払う沙汰もかねしだい    【萍漂子】

36 うつし世にかねに追われて四苦八苦 【萍漂子】

37 今様の寺は撞かせてかね招く   【萍漂子】

41 静謐な伽藍を走れかねの音   【萍漂子】  

42 静寂を刹那に破るかねの音   【萍漂子】

43 声明とかねの音寒し寺の堂   【萍漂子】

45 石の床震わすほどにかねの音   【萍漂子】

46 堂守りの撞くかね寒し冬の寺    【萍漂子】

47 かねのない師走の空に熱き酒    【萍漂子】

48 かねてよりかねを産むかね作りかね  【萍漂子】

57 コンビニのケースに暮らす雪うさぎ  【萍漂子】

58 雪うさぎ子らの知れるは氷菓子    【萍漂子】

59 雪降りて目と耳をさがせ雪うさぎ   【萍漂子】

60 雪うさぎビルの狭間で蹴飛ばされ   【萍漂子】

62 雪うさぎぶらんこの上で誰を待つ   【萍漂子】

63 それぞれの人となりか雪うさぎ    【萍漂子】

64 雪うさぎ今の家には棲みかねて    【萍漂子】

67 言祝ぎの声に跳ねぬか雪うさぎ    【萍漂子】

68 雪うさぎ猫は炬燵で背を伸ばし    【萍漂子】

69 雪うさぎ下駄箱の上で水浸し    【萍漂子】