⑩●歌子選 【3.4.8.20.47.55)
3夏川やドレミファ橋をポンポンと
ドレミファ橋・・なんて素敵な名前の橋なんでしょう。
ネットで調べてみたら、本当にあるんですね。
旧ドレミファ橋のほうが趣があり、ぽんぽん
飛び跳ねて渡っている景がみえて、楽しくなって
しまいました。
4 終止符を打って見上げる夏木立
一体何に終止符を打ったんでしょう。
ともかく、心の中をずっと占めていたある問題に
もうこれでおしまい!これ以上は考えない!と
決断したのです。問題は山積みです。そのことが
暑苦しいほどにおい茂った夏木立の季語とよくかみ
合っていると感じました。
8 物干しに仕掛けられるや蜘蛛の糸
朝にはなかったのに、洗濯物を取り込もうと
すると、くもの巣がかかっていて、うひゃー
って叫んで、ギモジワリーーっていいながら
そこを避けて、取り込んでいます。「仕掛けられる」
が面白い。できるだけ文語体で・・・となれば
「仕掛けらるるや」となるでしょうか。
20 口元は童顔のまま夏燕
燕をよく見たことがないのですが、作者は
よく観察されてますね。童顔のままという
表現が新鮮な感じでした。
47 夕焼けの沁みる野良着や岩木山
普通なら夕焼けが「染みる」としたいところですが、
作者はあえて「沁みる」としたのです。岩木山は地元では
お岩木様とあがめられている霊山。岩木山に守られて、一日の
農作業をし、仕舞終えて夕焼けに押されながら家路につく農夫
ミレーの晩鐘とか、落ち穂拾いとか、そんな絵を思わせて、
なんとも美しく、感謝が心に染みてくるような、そして景の大きな
句だと思いました。
55 夕焼けや壁にもたるる恋心
やで切っているので、この後は何をもってきても
俳句としての形は成り立つはずですが、「恋心」のこの
切なさは、夕焼けだからこそ、一層際立っているとおもい
ます。恋がでると、妙にべたついて生っぽくなるものですが、
べたついた感じがしないのは無機質な壁にもたれている
からでしょうか。
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●歌子の作品
店番の婆様目で追ふ蝿二匹 歌子 | |
出迎えは古びた宿の夏燕 歌子
紫陽花の憂ひしたたる被災の地 歌子
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夕焼けやじゅっと燃え落つ日本海 歌子 | |
菜園の畝高くせる麦わら帽 歌子 | |