①歌子選 【11.16.19.23.30.39】
11 歩み来て万ほどのキス滝しぶき
滝を眺めているときに、不意にキスを浴びせられている
情景でしょうか、あるいは相手は人間ではなく、滝そのもの
を恋人に見立てたのでしょうか。「万ほどのキス」に、
一瞬、くらくらするようなクリムトの「接吻」の絵を思い出しました。
16 荷車で西瓜二玉届きけり
遠い日の懐かしい情景が目に浮かびました。
自転車で・・でも案外面白いかもしれないですが
『荷車』にやられたーーーっていう感じです。
19 熱風もさらりとなます夾竹桃
なます・・ってなんだろうと、思いつつ
「熱風もさらりとなます」の言葉のリズムに妙に惹かれました。
たべるなます?いや、きっと、「なます」って滅多打ちにする
っていう意味もあるから、滅多打ちにじゃなくて、さらっと
やり過ごしている夾竹桃・・っていうことでしょうか。
「も」・・だと、焦点がすこし散漫になるので「を」と限った
ほうがよいように思うのですがどうでしょうか。
23 夏草の刈りて巣の蜂向かふなり
夏草を刈っているときに、蜂の巣も一緒に刈ってしまい
わ~^大変、蜂が向かい来る様子が目に浮かびます。
声を出して読んでみると、何かリズミカルにいかない。
突っかかるようで、テンポが悪いので、素直に
夏草を刈りて巣の蜂向かい来る はどうでしょうか。
30 かぜなみにただようくらげのにほんかい
「風波に漂う海月」の表現に惹かれました。
日本海まで持ってくると、説明っぽい感じと
盛りだくさんで、くどくなってしまうので、
風波に漂ふている海月かな ではどうでしょうか
39 沈みゆく海月蒼さに溶けてゆき
蒼さにとけていく、という表現に、惹かれました。
クリスチャンラッセンの美しい青い色遣いが髣髴と
してきました。
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歌子の作品
悩みなど無しや海月の舞ひ軽し 【歌子】
水玉の花となりきり舞ふ海月 【歌子】
大滝の知も情もなく轟けり 【歌子】