1月句会 作品と選句と作者
作品 選 作者
1 |
冬の海二億円の漁で沸く |
法 |
歌子 |
2 |
一輪の紅侘助を壁に生く |
法 |
祥雲 |
3 |
他人(ひと)の庭鼓動高鳴る姫椿 |
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一駒 |
4 |
ひとすじの光や白し冬の海 |
駒 |
法被衣 |
5 |
冬の海黄昏のビギン口遊み |
駒 |
牛郎 |
6 |
原発の惨たる景や冬の海 |
◎牛◎法 |
祥雲 |
7 |
単線のトンネルの先雪女 |
歌 牛 祥 |
法被衣 |
8 |
善きことの起こる予感や初茜 |
◎祥 |
歌子 |
9 |
松過ぎや湖に上がりし鯉を煮る |
祥 駒 |
牛郎 |
10 |
迎春や老いの智慧足すまた一つ |
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法被衣 |
11 |
迎春や目出度きことに思い馳せ |
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一駒 |
12 |
迎春や一位目指してたすき継ぐ |
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歌子 |
13 |
三家族みなみな揃い今朝の春 |
歌 牛 駒 |
祥雲 |
14 |
咲き初めて姫椿垣とぞにほふ |
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牛郎 |
15 |
海鳥や餌に飛びつく冬の海 |
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一駒 |
16 |
ゆったりと街ゆく老いや姫椿 |
祥 |
法被衣 |
17 |
無人船波の花翔ぶ西海岸 |
◎歌 |
一駒 |
18 |
鐘撞けば殷々浄々初詣 |
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祥雲 |
19 |
迎春の漆器の箱の古びたし |
歌 |
牛郎 |
20 |
煩悩も一病も秘め姫椿 |
牛 法 |
歌子 |
選句と一言感想
①歌子選(7,13,◎17,19)
7単線のトンネルの先雪女
川端康成の小説の一文を思い出しますが、「単線のトンネル」を愛してはいけない混沌とした愛と読み込み、その行きつく先は「かかわってはいけない雪女」とよみこむ。最近の芸能人のショックなニュースのせいで、深読みさせられました。作者様、すみません。
13 三家族みなみな揃い今朝の春
みなみな揃い・の言い回しに、子供たち家族全員がそろった喜びの心境があふれています。我が家でも数年ぶりに三人の息子たちがそろいとても華やいだ幸せなひと時でしたので、喜びあふれた心情が重なりました。
◎17 無人船波の花翔ぶ西海岸
数年前の冬に青森の西海岸に打ち上げられた無人船の傾いた映像が、くっきり浮かびました。
19迎春の漆器の箱の古びたし
新年を迎えるごとにおせち料理が詰めこまれた漆の器、代々大事に使われてきた器は丁寧に丁寧に磨かれていますが、その器をしまい込んである木箱が茶色く変色して古びているさまが目に浮かびます。
②牛郎選【◎6、7、13、20、】
◎6、原発の惨たる景や冬の海
復興の見通しが全く見えない福島原発に怒りが込み上がります。
7、単線のトンネルの先雪女
有名な小説の文章が出てきました。
13、三家族みなみな揃い今朝の春
年末年始なかなか家族が揃わなくなり羨ましく思います。
20、煩悩も一病も秘め姫椿
姫椿の花の咲き始めから散る様子に思いが通ずる気がしました。
③祥雲選 【7、◎8、9、16】
7 単線のトンネルの先雪女
川端康成の「雪国」を思わせる、幻想的な物語性のある良句です。
◎8 善き事の起こる予感や初茜
元朝の曙光が上がる前の荘厳な雰囲気が巧く表現された良句です。
9 松過ぎや湖に上がりし鯉を煮る
寒中の鯉は旨みが増すといわれていますので、
琵琶湖に上がった鯉はさぞ美味しいことでしょう。
鯉を煮ている作者の心情が伝わってきます。
16 ゆったりと街ゆく老いや姫椿
心和やかに街をゆったりと歩いている老人の姿が
まるで姫椿のようだという意でしょうか。よく調和した良句です
④法被衣選【1、2、6◎、20】
1冬の海二億円の漁で沸く
湧きたつ熱気が伝わってきます。
獲れた魚は何でしょうか?
2一輪の紅侘助を壁に生く
茶会の準備の誰もいない茶室と緊張感が一輪の赤い椿で和らぐようです。
◎6原発の惨たる景や冬の海
福島第一原発の景、これから先何十年の負の遺産を見続ける事になるのでしょう。風景とともに心の荒涼感も迫って来ます。
20煩悩も一病も秘め姫椿
姫椿はあくまでも自然体、それに対峙する悩める人の心の内を見事に捉えていると思います。
⑤あらまち一駒【4,5,9,13】
4、ひとすじの光や白し冬の海
月の明かりでしょうか、日没直前のプラチナ状に光るすじでしょうか、それとも吹雪想像をかき立てます。
5、冬の海黄昏のビギン口遊み
寂寥感に私も歌いたくなる冬の海観れば
9、松過ぎや湖に上がりし鯉を煮る(◎)
栄養とらなくちゃ鯉こくで
13、三家族みなみな揃い今朝の春
大家族の賑わいが伝わって幸先いい感じ