選 句
1 戯れる少女の脚や夏の波 【祥雲】
祥
2 トンネルを抜ければそこは夏の海 【牛郎】
法 牛
3 炎昼や氷ひとかけ金魚鉢 【歌子】
4 夏の海青い空ただウトウトと 【一駒】
駒 祥
5 足裏の砂えぐられし夏の海 【法被衣】
7 釣人のなりして子らは夏の海 【歌子】
8 巴里祭をダシに呼ぶこむ老女かな 【一駒】
駒
9 巴里祭平和な街と戦禍の報 【法被衣】
10 葡萄酒を飲みかつ踊るパリー祭 【祥雲】
牛
11 故郷に戻りたし候土用東風 【一駒】
歌 祥
12炎昼やひもののごとく寝間にゐる 【牛郎】
13すれ違いざまにウインク巴里祭 【歌子】
14 土間の隅犬も腹這う炎昼下 【一駒】
駒
15 炎昼や散歩の犬の息遣い 【法被衣】
16 釣り上げし魚に一礼土用東風 【歌子】
◎歌
17 苧麻の出来蒟蒻の出来土用東風 【牛郎】
18 元首相7月8日不覚散る 【一駒】
◎駒 ◎祥
19 発電のプロペラ嬉々と土用東風 【法被衣】
◎法
20 青東風や草はむ驢馬と山羊の耳 【祥雲】
21 夏菊や母の遺影の笑い顔 【牛郎】
歌 牛
22 懐かしきトマト臭さにめぐり遭ふ【法被衣】
法 歌
23 九人で啜るそうめん夏座敷 【祥雲】
◎牛
24 あらあなた左巻きだったのね捻り花 【歌子】
法
25 天仰ぐ蚯蚓の骸(がい)や夏の昼 【祥雲】
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選句・感想
法被衣選【◎20,3.23,25】
特選
◎20 青東風や草はむ驢馬と山羊の耳 【祥雲】
青空から草原、動物、その動く耳までのズーミングがすばらしい。
3 炎昼や氷ひとかけ金魚鉢 【歌子】
さすがに金魚も暑かろう、目線に浮かぶ氷の浮遊感と金魚鉢の透明感。
涼やかに泳ぐ無言の金魚に昔ながらの金魚鉢がお似合いです。
23 九人で啜るそうめん夏座敷 【祥雲】
帰省でしょうか、日本家屋の広い座敷でそうめん、日本ならではのいい光景です。
25 天仰ぐ蚯蚓の骸(がい)や夏の昼 【祥雲】
ミミズを蚯蚓と書く事を知りました。
作者の観察眼に脱帽。
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歌子選 【◎17,12,22,23】
特選
◎17 苧麻の出来蒟蒻の出来土用東風 【牛郎】
苧麻の出来具合はどうか蒟蒻の出来具合はどうか 素晴らしい出来に違いな
い、そんな感じが、季語とかみ合って伝わってきます。
並選
12 炎昼やひもののごとく寝間にゐる 【牛郎】
干物とはあまり言い得ていてつい吹き出しました。
22 懐かしきトマト臭さにめぐり遭ふ 【法被衣】
最近のトマトは、品種も多く昔見たこともないような珍しい形をしたトマトが多
いものの、味がだるくてこれぞトマトというものに出会わないのですが、昔のト
マトは、酸っぱくて青臭くておいしかったです。あのおいしさ、味、香りが伝わ
ってくるようです。
23 九人で啜るそうめん夏座敷 【祥雲】
遠くに離れている子供家族が、実家にあつまって、そろって昼のそうめんを食べている景でしょうか。こんな風に家族がにぎやかに集まることが何の不思議もなかった平和な日々が無性に懐かしく恋しく思われます。
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あらまち一駒選【◎19、5,9,15,】
特選
並選
5 足裏の砂えぐられし夏の海 【法被衣】
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祥雲選 【◎19,2,5,12】
特選
◎19 発電のプロペラ嬉々と土用東風 【法被衣】
風力発電の様子が生き生きと表現されています。「嬉々」も摩擦音にも聞こえます。
並選
2 トンネルを抜ければそこは夏の海 【牛郎】
川端康成の「雪国」の一節に似た、明るい場面への転換が巧みです。
5 足裏の砂えぐられし夏の海 【法被衣】
この経験は私にもあり、共感の選です。
12 炎昼やひもののごとく寝間にゐる 【牛郎】
この感覚はよくわかります。共感の選です。
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暑い中、皆様お元気でしょうか。お疲れ様です。今月も句会を無事に終えることができてほっとしています。
さて、選句を送ってくださる際の表記の仕方ですが、祥雲さんの「特選」「並選」
に習って、今後は、「特選」と「並選」という表記に統一したいとおもいます。二重丸は作品番号の頭に表示してください。