●歌子選 【5.28.40.48.59】
5.湯豆腐やほろりと妻にありがとう
たよりない湯豆腐のほろほろ感と、
今おかれている作者の頼りない状況、
そんな中で、がんばってくれている
妻へほろっとつぶやくありがとう。
現実が重いほど、このさりげなくみ
える「ありがとう」にこめられた作者
の深い思いを想像して胸が熱くなりました。
28.冬支度在りし父の手たどりつつ
冬支度はすべてお父さん任せだったんですね。
たくさんの庭木の冬支度は大変。『父の手たどり』に
お父さんへの深い思いが感じられます。天国にいるお父様に
この俳句みせたいですね。
40.湯豆腐ののれん横目に南禅寺
南禅寺に行く道々に湯豆腐を食べさせてくれる店
の暖簾を見つけてしまった作者。寺めぐりよりも
あっちのほうがいいんだけどね、そんな思いを
『横目に』に実にうまくあらわしていますね。
48.宵闇を電車の窓に迎えおり
通勤電車でしょうか。あーー今夜もまたこんな
時間になってしまったなあ。このところ久しく
明るいうちに帰宅したことがない。。家に帰れば
きっとチンするだけの料理が、テーブルに乗っか
っていたりして。
迎えてくれるのは猫ちゃんだけだったり。。。
あ^^想像しすぎてしまいました。
59.霧降りて谷の集落まだ明けず
まるでモノクロ写真でも見ているよう。
静けさと空気の冷たさまで感じられるような
美しい句ですね。
●歌子の作品
1.湯豆腐や妻もあぐらをかひてをリ
11.湯豆腐や夫はのらりと生返事
26.宵闇の短き逢瀬ひしと抱き
36.宵闇に流行り歌など口ずさみ
45.窓洗ひ鉢を片付け冬に入る
53.海の香のふきこぼれたるじゃっぱ汁
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