歌子選(3.6.7.19.24.26.)
3 浮子にらみ当たり知らせる月揺れる
月の浮かぶ凪の海で、夜釣りをしている。
浮きが沈み、同時に水面の月がゆらっと
揺れてあたりを知らせてくれる・・
そんな景なのでしょうか。浮きをじーっと
そんな景なのでしょうか。浮きをじーっと
見つめているのを、「にらみ」というのは
実感なのでしょうが、経験のない私には
夜の海というだけでも怖いのに、にらみ・・・
夜の海というだけでも怖いのに、にらみ・・・
が一層その怖さを増し、そんな闇の中で釣りを
する心境ってどんなものなんだろうって、
知らない世界を垣間見る怖さで一杯になります。
6 月を待つ雨雲去りて岩れんげ
墨絵でも見るような句だなあとおもいます。
ただ、言葉の並びがぶつぶつと切れるので、
ただ、言葉の並びがぶつぶつと切れるので、
もう少し滑らかに並べ替えることもできそうな
気もします。
7 赤い月待ちわぶ顔の並びおり
7 赤い月待ちわぶ顔の並びおり
多くの人が月食を今か今かと空を見上げ、
赤い月をカメラにおさめたようで、フェイ
スブックにも、たくさんの人たちの写真が
載っていました。スーパームーンの出た夜にも、
載っていました。スーパームーンの出た夜にも、
赤い月でしたが、それ以上に、真っ赤なという
か赤銅(しゃくどう)色の月だったようです。
今回数人の方々が、この日の月を詠まれました
が、一番シンプルな表現の法被衣さんのこの句
を選びました。
19 海峡の風は止まずや星月夜
海峡の風は止むことなく吹きつけているが、
空には満天の星・・そんな景なのでしょうか。
津軽海峡から吹く身を切る風の寒さと、満天
の星空の音さえも聞こえてきそうです。
24 集落の廃屋隠す蔦紅葉
放射能のために人々が去って行った集落
が目に浮かびました。廃屋となってしま
った家を抱きかかえるかのように、蔦紅
葉が覆っている。かつてはここに、家族
姉たちがよく出入りしていたしゃれた歌声
喫茶がとっさに目に浮かびました。高校生は、
喫茶店はダメと言われていた時代でしたので
早く大人に早くなりたいなあと憧れや夢を抱いた、
甘酸っぱい思いの重なる一句でした。