第155回11月句会作品と選句と作者
牛
1 黄の帽の園児の列や小鳥鳴く 【祥雲】
駒
2 まな板の音高らかに大根断つ 【法被衣】
3 大根葉青虫食べてその色に 【牛郎】
4 小鳥来て餌場の田んぼ姦しい 【あらまち一駒】
祥
5 角煮大根ほろほろ炊いて夫を待つ 【歌子】
6 道の駅蛍の光小鳥来る 【法被衣】
7 寺の庭実生の多く小鳥来る 【牛郎】
祥
8 熱々の大根おでん人恋し 【あらまち一駒】
駒
9 小鳥くる私は十粒薬飲む 【歌子】
法
10 黒土ゆにっと笑み立つ大根かな 【祥雲】
◎牛 駒
11 衣擦れの満天姫や銀杏落葉 【歌子】
牛 歌
12 ソバージュに染まる岩木山冬来たり【あらまち一駒】
祥 法
13 アケボノゾウの化石を抱きて山粧ふ 【牛郎】
14 遠くから落ち葉舞上げ車来る 【法被衣】
◎駒 歌 法
15 青空の青を深める柚子の色 【祥雲】
牛 ◎法
16 狼藉の猪(い)の爪痕の荒々し 【祥雲】
歌
17 同じ道一年経ちて蔦紅葉 【法被衣】
◎祥 ◎歌
18 錫杖の列の響きや秋の嶺 【牛郎】
19 大銀杏黄金に染まり又長寿 【あらまち一駒】
20 軒下に寒風すさぶ吊るし柿 【歌子】
♬ 選 句 ♬
祥雲選【◎18、5、8、13】
◎18 錫杖の列の響きや秋の嶺
修験者などが秋の嶺にのぼる様子が生き生きと表現された良句です。錫杖の鐶の鳴る音が心地よく響く感じが伝わってきます。
5 角煮大根ほろほろ炊いて夫を待つ
「ほろほろ」の表現が効いている、優しくて愛情深い気持ちが伝わってくる良句です。
8 熱々の大根おでん人恋し
コロナ禍で一人で大根おでんを食べているのでしょうか。「人恋し」に心惹かれます。
13 アケボノゾウの化石を抱きて山粧ふ
「山眠る」にも季語が動くような気もしますが、アケボノゾウの黄金時代を想像すれば、「山粧ふ」でもいいのかなと納得できる良句です。
牛郎選【1、◎11、12、16、】
1 黄の帽の園児の列や小鳥鳴く
鳴くにされたのが園児を感じさせられました。
◎11、衣擦れの満天姫や銀杏落葉
満天姫調べて見ました、戦国時代に生きた女性の一生勉強させて頂きました。
12、ソバージュに染まる岩木山冬来る
ソバージュに染まるの表現がお見事。
16、狼藉の猪の爪痕の荒々し
農作物の鳥獣被害、憎くも有り可愛くも有り複雑な思いです。
法被衣選【10,13,15,◎16】
10 黒土ゆにっと笑み立つ大根かな
黒土やの誤記ではないかと思われますが、収穫時の大根の白、土の黒、笑みからこぼれる白い歯と日に焼けた黒い顔の対比が連想できて面白いと思いました。大根抜くという行為がないと大根が笑っているという文脈にも?
13 アケボノゾウの化石を抱きて山粧ふ
山には何万回秋が来たのだろうと遥か古代に想いを馳せる悠久の句。
15 青空の青を深める柚子の色
柚子の黄色と青い空の対比が眩しいです。
青空の青→空もしくは空の青、柚子の色→柚子とことばの省略は可能と思われます。
◎16 狼藉の猪(い)の爪痕の荒々し
狼藉がすべてを言い表しているように思えます。
畑を荒らされて腹立たしいけれどお前たちも生きてるんだしなあという心の機微を勝手に想像します。
あらまち一駒選【2,9,11,◎15】
2 まな板の音高らかに大根断つ
見事な大根の姿が浮かびます
9小鳥くる私は十粒薬飲む
いきいき小鳥に比べ私ゃ歳とって哀れでも楽しんでる姿が浮かぶ
11 衣擦れの満天姫や銀杏落葉
銀杏の葉っばの形を満天姫の打掛に見立てた情景が浮かびます。
◎15 青空の青を深める柚子の色
色の組み合わせが素敵です。
歌子選 【12、◎15、17,18】
12 ソバージュに染まる岩木山冬来たり
岩木山は見ようによっては、美しい女体に見えると言われて いますが、その女体から零れ落ちる長い髪が、ソバージュのように染まっているとは、岩木山をどこまでも美しく愛する気持ちが感じられます。
15 青空の青を深める柚子の色
よく晴れ渡った青空の下、広大な柚子の畑が目の前に広がり
実り豊かな美しい光景、作業する笑顔が目に浮かんできます。
青と橙色の対比がお見事です。
17 同じ道一年経ちて蔦紅葉
新緑から始まったいつもの道が気が付いたら、紅葉しているその美しさに、しばし足を止めて眺めている気持ちになりました。
◎18 錫杖の列の響きや秋の嶺
小さいころ、「サイギサイギ ドッコイサイギ」 「オヤマサハツダイ」 「イーツニナ~ノサイ」などと歌いながら、錫杖を鳴らしながら列をなして人々が歩いているのを見たことがありますが、あれが何のお祭り(?)儀式(?)だったのか、覚えていませんが、子供心に恭しい思いでその列について歩いたのを思い出しました。この一句で、貧しくも豊かだった人間関係や過去の空気をいっぺんに思い出しました。