第151回7月句会 作品・互選・選評・鑑賞・作者
1 亡き母は南部風鈴愛しけり 【祥雲】
2 風鈴やニシンとナスのおばんざい 【牛郎】
牛◎ 歌
3 窓開け放つ夜風鈴も黙す 【法被衣】
4 夏休みテニス封印受験生 【あらまち一駒】
牛 法 駒◎
5 夏の雨デザートのごと薬飲む 【歌子】
6 牛肉をしっかり食べて暑気払い 【祥雲】
7 連れ合いとステイホームの暑気払い 【法被衣】
祥 駒
8 もてなしのどぜう蒲焼暑気払ひ 【牛郎】
9 風鈴や旅の思い出チロロリン 【あらまち一駒】
10 怪談の間合いに風鈴チーンと鳴る 【歌子】
歌◎ 牛
11 背負い籠に山百合いれて母帰る 【祥雲】
駒
12 新コロナどこ吹く風の百合の花 【法被衣】
歌 法
13 百合の咲く庭に自由な猫が寝る 【牛郎】
14 十万円暑気払いにジュエリー 【あらまち一駒】
祥
15 香辛料あまた煮込みて暑気払い 【歌子】
駒
17 7月やネットで映画夜の更けて 【法被衣】
祥◎ 歌 法◎
18 親戚の子の様に来る雨蛙 【牛郎】
歌
19 佐渡の百合流人の気品醸し咲く 【あらまち一駒】
牛 法
20 売却の生家の庭に百合一輪 【歌子】
選句 ・鑑賞・選評
祥雲選 【2、8、15、18◎】
2 風鈴やニシンとナスのおばんざい
三つの季重なりですが、気になりません。
風鈴の音を聴きながらの夕食の景でしょうか。
穏やかな家族の様子も窺える良句です。
8 もてなしのどぜう蒲焼暑気払ひ
これは精がつきそうな食べ物ですね。暑気払いに相応しい良句
です。
15 辛香料あまた煮込みて暑気払い
辛香料を一杯入れての食事作りの様子が巧みに表現された、
暑気払いに相応しい良句です。
◎18 親戚の子の様に来る雨蛙
雨蛙の様子がとても可愛らしく表現された良句です。
歌子選 【3、11◎,18,19】
3 窓開け放つ夜風鈴も黙す
575のリズムに乗れないもどかしさが、逆にそよりとも
風の吹かない夏の夜の寝苦しい蒸し暑さにつながり、
句の作り方というか、計算されているというか、贅肉の
ない巧みさがすごいと思いました。
◎11 背負い籠に山百合いれて母帰る
山が好きで、花が大好きだった母の姿と重なり、句を
じっと見ているうちに、気持ちがあの時代にワープしました。
いま母にあいたいと切ない涙がこみ上げました。
18 親戚の子の様に来る雨蛙
雨蛙が出てくるのを、「親戚の子のように」とは、たとえが
愛らしすぎて笑いがこぼれました。作者のやさしいまなざし
が感じられ、人間関係が濃厚だったいい時代のことに
さかのぼって優しい気持ちになりました。
とても素敵な句です。
19 佐渡の百合流人の気品醸し咲く
百合の花は気品にあふれたものですが、「流人の気品」と表現されたところに佐渡で実際に観たのであろう臨場感と深みを感じました。「流人の気品」で、もう十分にその気品が表現しつくされていると思うのですが、下五でさらにそれを説明しているのは、佐渡の歴史を込めたかったのだと思いますが、百合というだけで「咲いている」のはわかりますし、流人の気品というだけで、「醸し出している」のは伝わりますので、下五は海とか空とか、シンプルに風景描写をされたら、広がりも色彩ももっと豊かになるような気がしました。(自分の句を棚に上げて、オベダフリですみません)
今月選んだ4句のどれも素晴らしくて、全部◎にしたかったです。
3牛郎選【3◎、5、11、20、】
◎3、窓開け放つ夜風鈴も黙す
子供の頃の夏の夜思い浮かんできます。
5、夏の雨デザートのごと薬飲む
昔、父親が食事後数種類薬を子供心に美味しそうに感
ました。
11、背負ひ籠に山百合入れて母帰る
姉が笹百合の里へ嫁ぎました、あの頃が懐かしい。
20、売却の生家の庭に百合一輪
時の流れを感じます。
法被衣選【5,13,◎18,20】
5 夏の雨デザートのごと薬飲む
食後の薬、あれやこれやと夏の雨のようにせわし
ない。
時間軸(朝餉、昼餉、夕餉など)が入ると映像がも
っと鮮明になるように思います。
13 百合の咲く庭に自由な猫が寝る
猫の気ままで自由な姿がほほえましい。
咲く、自由は省けると思うのでその分情景描写を
盛り込めるのではと思います。
◎18 親戚の子の様に来る雨蛙
雨蛙に親戚の子のイメージをダブらせているとこ
ろが巧みです。
20 売却の生家の庭に百合一輪
思い出が詰まった生家の売却、
一輪の百合の花は無言の語り部。
あらまち一駒選【5◎、8、12,17】
5 夏の雨デザートのごと薬飲む(◎)
どっさと薬飲んでるんでしょうね
8 もてなしのどぜう蒲焼暑気払ひ
精気がついて暑さ吹っ飛ばし働こうって会話が聞 こえるようだ。
12 新コロナどこ吹く風の百合の花
百合の花に巷の騒動も一瞬忘れそう
17 7月やネットで映画夜の更けて
ホームステイで映画三昧をしてました