駒
1 水やれば亡母うかぶや石蕗の花 【祥雲】
2 街灯に強く光りて石蕗の花 【牛郎】
3 閉じる店石蕗の花先に咲き 【一駒】
駒
4 露天湯のけむり艶やか八つ手の葉 【歌子】
5 石蕗の花道案内の茶会かな 【法被衣】
祥 牛 歌
6 口元の見えぬ賑わい酉の市 【法被衣】
祥
7 渋柿の皮剥く五百六百個 【歌子】
◎祥 ◎牛 法 歌
8 腰上げの一と針嬉し七五三 【一駒】
◎駒 法 ◎歌
9 天翔る寂庵の主冬紅葉 【牛郎】
10 曜変の天目茶碗冬の星 【祥雲】
祥
11 花八手ミュージアムへと抜ける路地 【牛郎】
◎法
12 花八手空にポンポンシャンデリア 【一駒】
14 花八手接写の白き大宇宙 【法被衣】
15 逆光に透くや優美な花八手 【祥雲】
16 冬来たる泥縄式に車庫に居る 【一駒】
17 老いの午後うつらうつらと石蕗の花 【歌子】
18 何もせずはや十一月の声をきく 【法被衣】
牛 歌
19 稲鎌を供え新嘗祭の宵 【祥雲】
20 十一月四条華やぐ招き上げ 【牛郎】
21 縁はかる十一月の大社(おおやしろ)【祥雲】
22 椀と箸持って並ぶや新嘗祭 【牛郎】
23 脱れ逃げ新嘗祭にバスタオル 【一駒】
牛 法
24 頭一つ孫に越されて初冬かな 【歌子】
駒
25 新嘗祭古代の祈り今もなお 【法被衣】
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選 句 鑑 賞
(1)祥雲選【6,7,◎8,11】
6 口元の見えぬ賑わい酉の市
マスクをしているので口元が見えないが、感染者も減ってきて酉の市が賑わっている。「かっこみ」「はっこみ」の縁起物の熊手が飛ぶように売れているさまを想像します。
7 渋柿の皮剥く五百六百個
下句の数値が大変な皮剥き作業の様子を表現していて、斬新でいいと思います。
◎8 腰上げの一針嬉し七五三
姉の着た着物の丈を短くして、妹に着させる親の気持ちが巧みに表現されています。
11 花八手ミュージアムへと続く路地
心弾む現実感のある、取り合わせの斬新な良句です。
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(2)あらまち一駒選 【1、4、◎9、25】
1 水やれば亡母うかぶや石蕗の花
花の命は手入れ次第で長く命を育む、母の形見ならなお愛おしい
4 露天湯のけむり艶やか八つ手の葉
アダムとイブの某所を隠した八手の葉を連想させた
◎9 天翔る寂庵の主冬紅葉
死なないかと思った瀬戸内寂聴さんも紅葉の葉っぱが枯れるように逝かれた姿を大往生だよって詠んだ句に感じられて良かった。
25 新嘗祭古代の祈り今もなお
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(3)牛朗選【6、◎8、19、24、】
6、口元の見えぬ賑わい酉の市
コロナ制限解除後も離せないマスク姿、終息を願うばかりです。
◎ 8、腰上げの一と針嬉し七五三
我が子の成長が伝わる句に感動。
19、稲鎌を供え新嘗祭の宵
近年大型コンバインでの稲刈りですが伝統のお祭りが浮かびます。
24、頭一つ孫に越されて初冬かな
孫の生長に嬉しくもあり悲しくもあり。
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(4)法被衣選句【8,9,◎12,24】
8 腰上げの一と針嬉し七五三
昔の子供は短命ゆえに子供の成長を祝う七五三、
無条件の嬉しさに溢れています。
9 天翔る寂庵の主冬紅葉
寂しいですが時代の移り変わりは誰にも止められません。
◎12 花八手空にポンポンシャンデリア
作者の観察眼とポンポンシャンデリアの表現が絶妙です。
24 頭一つ孫に越されて初冬かな
子供・孫の成長を喜ぶ心情が伝わってきます。
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(5)歌子選 【6,8,◎9,19】
6 口元の見えぬ賑わい酉の市
マスクで隠れていても、賑わいあふれる酉の市の様子が目に見えるようです。(酉の市はテレビで観たことがあるだけで実際の賑わいを経験したことがありません。)
8 腰上げの一と針嬉し七五三
わたしらの世代は、針仕事はあまり得意でない人が多いように思いますが、娘が着た着物の腰上げを一針一針一生懸命縫い上げたときの達成感、やるじゃなーーい私!って叫びたい思いと孫さんに着せてあげられる喜びが、あふれ伝わってきました。
喜怒哀楽の感情を言葉で直に表現せず(この場合はうれし)
それにかわる動作や状況を入れるほうがよいと、プレバトの夏井先生はよく言われますので、「うれし」を動作で表現してみてほしいと思いました。
(自分の句を棚に上げて🙇)
◎9 天翔る寂庵の主冬紅葉
毎日牛肉を好み、今でも恋する気持ちを持っているなどと笑顔で言い放つていらした100歳に近かった寂庵さんを冬紅葉に例え、命の灯が燃え尽きたことを、天を翔けるという表現をされたところが、余りにも自然で美しく寂庵さんのそのままを表現していて感服しました。
19 稲鎌を供え新嘗祭の宵
新嘗祭の様子がうかがえます。こういうお祭りがあったとは、今回のお題が出るまで
知りませんでした。牛郎さんの22の 椀と箸持って並ぶや新嘗祭 と併せて新嘗祭の様
子をイメージしました。