道 牛
1父子して牛追う道や秋の暮 【祥雲】
駒
2古本の匂いや沁みる秋の暮 【道草】
3朝顔を目隠しにして着替え中 【歌子】
4夕焼けに豆腐二丁秋の暮れ 【一駒】
5朝顔や兄の形見の紺パッチ 【牛郎】
道
6朝顔やバス停の人背伸びして 【法被衣】
◎歌 祥
7ガラス越し母の面会梨ふたつ 【道草】
8アモーレと言いつ言われつカーニバル 【歌子】
9朝顔に母屋盗られてブルーかな 【一駒】
祥
10梨を剝く母の手確かふしくれて 【牛郎】
◎道
11手に取りて梨の重さの道の駅 【法被衣】
◎駒 法
12朝顔の栞や逝きし妹の 【祥雲】
牛
13梨狩りや食べ放題と言われても 【歌子】
道
14仮面なら嘘もつけます謝肉祭 【一駒】
歌
15新米に一等米の検査印 【牛郎】
16雨煙る新米を刈る女(ひと)一人【法被衣】
17新米に農夫を想う夕餉かな 【祥雲】
18朝顔や空き家の塀にからまりて 【道草】
道 祥 法
19塩結びだけの朝餉や今年米 【歌子】
◎牛
20新米や笑みも溢れた里帰り 【一駒】
21赴任地の映像見入る謝肉祭 【牛郎】
22愉しみに季節の向こうの謝肉祭 【法被衣】
法
23皮をむきベッドの母へラフランス 【祥雲】
駒
24新米や三キロを探す老夫婦 【道草】
◎祥 ◎法
25一病を超えて六年秋の暮 【歌子】
歌
26手土産の畑から梨バスに揺れ 【一駒】
27ともかくも刈り取り終へる秋の暮 【牛郎】
歌 祥 駒 牛
28和太鼓の生徒は一人秋の暮 【法被衣】
歌 法
29夕鐘にあまたの燭や謝肉祭 【祥雲】
駒 牛
30フィレンツェの仮面舞踏や謝肉祭 【道草】
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選句と感想
(1)道草選 【1,6,◎11,14,19】
1父子して牛追う道や秋の暮 【祥雲】
6朝顔やバス停の人背伸びして【法被衣】
◎11手に取りて梨の重さの道の駅【法被衣】
道の駅で新鮮で買い求めやすい値段についたくさんの梨を買い、その重さにしみじみ秋を感じている様子がうかがわれます。
14仮面なら嘘もつけます謝肉祭【一駒】
19塩結びだけの朝餉や今年米 【歌子】
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(2)歌子選 【◎7,15、26,28,29】
◎7ガラス越し母の面会梨ふたつ【道草】
今この時代に、このような切ない思いをしている家族がどれほどいることかと思います。
ガラスの向こうの母と無言のまま笑顔を食い入るようにみつめあいかわしあっている姿を思い浮かべて、涙のこぼれる思いです。
15新米に一等米の検査印 【牛郎】
一年の労苦が報われるような一瞬、農夫の誇らしげな笑顔が目に浮かぶようです。
26手土産の畑から梨バスに揺れ 【一駒】
畑から急いでもいできた梨を客人に手土産として持たせてくれたのでしょうか。それともその逆に、畑から梨をもいで、それを手土産にしたのでしょうか。きどりのない愛情をずしりと感じます。
28和太鼓の生徒は一人秋の暮れ【法被衣】
祭りも何もいたるところで皆中止となったため、練習に来る人もいません。
こんな時こそ、いざというときのために腕を磨いていてほしいと思う一方で、そういう情熱も萎えさせてしまうこの状況、なんともやり切れません。
29夕鐘にあまたの燭や謝肉祭 【祥雲】
謝肉祭ってどんなものかよくわかりませんが、お祭りの夜は、あちらこちらの教会から鐘が鳴り響き、いたるところにともしびがたかれるのでしょうね。この句からは喧騒が感じられず、シルエットのような美しさだけが浮き彫りに見えてくるようです。
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(3)祥雲選【7,10,19,◎25,28】
7ガラス越し母の面会梨ふたつ 【道草】
コロナ禍の句。見舞いの気持ちを届けて、硝子越しに会話をして去りゆく虚しさが巧みに表現されています。
10梨を剥く母の手確かふしくれて【牛郎】
大いに共感できる観察句です。苦労を重ねて来た母の手は確かふしくれていたなとしみじみ思う様子が良いと思います。
19塩結びだけの朝餉や今年米 【歌子】
簡素で美味しい今年米の塩結びに感謝しながら頂くようすが良いと思います。
◎25一病を超えて六年秋の暮 【歌子】
一病を超えて六年たつので、ほっと安堵の心情が吐露された良句です。
28和太鼓の生徒は一人秋の暮 【法被衣】
寂寥感と責任感が漂う良句です。
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(4)あらまち一駒選【2、◎12、24、28、30】
2古本の匂いや沁みる秋の暮 【道草】
読書の秋の光景が浮かびます
◎12朝顔の栞や逝きし妹の 【祥雲】
妹の形見の様に朝顔が生きてる様子に胸打たれる
24新米や三キロを探す老夫婦 【道草】
米の消費の減りが家族も減る喪失感を表して侘しさがでてる。
28和太鼓の生徒は一人秋の暮 【法被衣】
透明な秋の暮れに太鼓の音が吸い込まれそうで生徒数減がよく表れている
30フィレンツェの仮面舞踏や謝肉祭【道草】
映画で見たメディチ家の夕べが浮かぶ。
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(5)牛郎選【1、13、◎20、28、30、】
1父子して牛追う道や秋の暮 【祥雲】
友達が阿蘇で肉牛を飼っています、思い出しました。
13梨狩や食べ放題と言われても 【歌子】
思わず微笑みが出る句に引かれました。
◎20新米や笑みも溢れた里帰り 【一駒】
この時期米農家の楽しみの一つです。
28和太鼓の生徒は一人秋の暮 【法被衣】
外出自粛のおり、何とも寂しい限りです。
30フィレンツェの仮面舞踏や謝肉祭 【道草】
イタリヤ旅行に行った友達から楽しかった思い出話聞きました。
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(6)法被衣選【12,19、23、◎25、29】
12朝顔の栞や逝きし妹の 【祥雲】
古い本に挟まっているしおり代わりの色は褪せた朝顔の押し花、故人をいとおしむような得も言われぬ雰囲気が伝わって来ます。
19塩結びだけの朝餉や今年米 【歌子】
新米はそれだけでご馳走ですね。
我が家の朝はおむすびというパターンもよくあります。
23皮をむきベッドの母へラフランス 【祥雲】
ラフランス、自分の母方のお婆さんの好物でした。
歯が無くてもその軟らかさゆえおいしそうに食べていたのを思い出しました。
◎25一病を超えて六年秋の暮 【歌子】
秋の暮れは物思いに耽ります。
六年前に命に関わるような大病を経験されたのでしょうか、
今の生活をいとおしむ気持ちが伝わってきます。
29夕鐘にあまたの燭や謝肉祭 【祥雲】
灯がたくさんまたたいている景が浮かんできます。
ご自分の選句が反映されているか、各自ご確認ください・