歌 ◎法
1 光芒を掠めねぐらへ小白鳥 【祥雲】
◎ 牛
2 横すわりの熱燗注ぐ目の妖し 【歌子】
歌 祥
3 友逝きて弔吟捧ぐ冬桜 【あらまち一駒】
4 猪苗代白鳥の群れ遥かなり 【法被衣】
駒
5 白鳥や琵琶湖ブルーに数十羽 【牛郎】
歌
6 寒夕焼け西方浄土と交信す 【法被衣】
7 手も止まりアルバム捲る大晦日 【あらまち一駒】
法
8 生きているこその四苦八苦晦日かな【歌子】
牛 駒
9 子や孫と鋤鍋つつく大晦日 【祥雲】
◎祥 法
10 初産の牛の眼燃ゆる寒夕焼 【牛郎】
11 庭を掃く作務衣の僧や冬桜 【祥雲】
12 大晦日用もないのに農具小屋 【牛郎】
13 白鳥が来たいよよ来た寒が来た 【歌子】
祥
14 疫病や世は静かなる大晦日 【法被衣】
15 朝一の電話まさかの寒夕焼 【あらまち一駒】
祥
16 奥山に暮らす三代冬桜 【牛郎】
17 熱燗や徳利の口をもて注ぐ 【法被衣】
牛
18 旧友と熱燗徳利歌の中 【あらまち一駒】
◎駒
19 胸の内あかさず散るや冬桜 【歌子】
法
20 寒夕焼富士の半身を染めており 【祥雲】
駒
21 雲海を抱え羅臼の寒夕焼 【歌子】
22 熱燗や父は北支を語りだす 【祥雲】
23 啼き声で見上げた空に白鳥 【あらまち一駒】
牛
24 冬桜満開なるも寒き事 【法被衣】
◎歌
25 熱燗や喜寿の親爺のさばく鯉 【牛郎】
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(2)祥雲選 【3,◎10,14,16】
3 友逝きて弔吟捧ぐ冬桜
弔吟はしませんでしたが、同じような経験をしたことが
あるので、共感の選です。
遺影が温顔で、まるで冬桜のようでした。
◎10初産の牛の眼燃ゆる寒夕焼
目の付けどころの極めて斬新な句です。牛のお産に二度
ばかり立ちあったことがあるので、共感の選です。
牛が目に涙を一杯浮かべて、牛舎に差し込む寒夕焼けに
対している様子が生き生きと表現されています。
14 疫病に世は静かなる大晦日
コロナ禍の今どきの状況を感慨深く詠み込んだ良句です。
16 奥山に暮らす三代冬桜
奥山に暮らす実家の兄は九代目ですが、しみじみとした
感慨の籠った良句です
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(3)牛郎選 【◎2,9,18,24】
◎2、横すわりの熱燗注ぐ目の妖し
初めて連れて行って貰った料亭の芸者さんを思い出しました。
9、子や孫と鋤鍋つつく大晦日
家族団らんがよろしいようで。
18、旧友と熱燗徳利歌の中
「歌の中」いろいろ想像させて貰いました。
24,冬桜満開なるも寒き事
心温まる花に感激。
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(4)あらまち一駒選【5、9、◎19、21】
5 白鳥や琵琶湖ブルーに数十羽
白とブルーのコントラストが際立って綺麗
9 子や孫と鋤鍋つつく大晦日
幸せが来年にも続く希望に満ちている
◎19 胸の内あかさず散るや冬桜
突然に散る桜にリンクする哀しさが伺われ好きな句
21 雲海を抱え羅臼の寒夕焼
壮大な北海道羅臼の海山が目に浮かぶ
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(5)法被衣選【◎1,8,10,20】
◎1 光芒を掠めねぐらへ小白鳥
日は西へ傾き、一線の光の中飛び去る白鳥の群れ。雄大な景色。
8 生きているこその四苦八苦晦日かな
晦日といえば除夜の鐘。百八つの煩悩の中を生きる苦しみを
味わえる楽しみを噛みしめたいです。
10 初産の牛の眼燃ゆる寒夕焼
牛の眼に映るまあるい夕焼け、眼の付け所が面白いです。
20 寒夕焼富士の半身を染めており
なんとも劇的な光景。