牛 駒 法
1 印むすぶ菩薩の指に春の風 【祥雲】
祥 歌 法
2 血だらけの顔上げもどる恋の猫【牛郎】
◎歌 つ
3 何時になるコロナ征伐春彼岸 【一駒】
◎牛 歌
4 建国記念日猫寝息たてており【法被衣】
◎祥 ◎駒 法
5 臥して知る夫の気配り春の暮 【歌子】
歌
6 春浅し詩人に成れない鳥も居る【つゆき】
牛 駒
7 ビバルディの四季聴く朝や春浅し【歌子】
◎つ
8 曇り行くフロントガラス春浅し【法被衣】
9 モゾモゾと退職願い春浅し 【一駒】
10 寄せ豆腐掬う手に湯気春浅し 【牛郎】
つ
11 浅春や伊豆の湯宿の山のもの 【祥雲】
法
12 若鮎は遡上す一葉流るるまま 【歌子】
13 追さで漁小鮎たばしる鳥の羽根 【牛郎】
14 若鮎や座興に歌ふ演歌かな 【つゆき】
牛 歌 ◎法 つ
15 魚道(うおみち)に煌めき群れる小鮎かな 【祥雲】
祥 駒
16 若鮎を指さす子らも元気なり【法被衣】
17 若鮎や釣り解禁日先の先 【一駒】
18 川の辺のあんよの音や黄水仙【祥雲】
祥 つ
19 何事もなきこそ嬉し黄水仙 【歌子】
牛
20 空仰ぎ群れて首振る黄水仙 【一駒】
祥
21 黄水仙流れに沿いて凛と立つ 【法被衣】
駒
23 黄水仙花瓶の水が腐り出し 【つゆき】
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選句鑑賞
①祥雲選 【2、◎5、16、19、21】
2 血だらけの顔上げもどる恋の猫
想像するだけでもその激しさが感じられる実体感の良句です。
◎5 臥して知る夫の気配り春の暮
夫婦愛の極みのような、素晴らしい、しみじみとした温かみのある良句です。
16 若鮎を指さす子らも元気なり
ぴちぴちと元気な若鮎と子供達の様子が感じられる良句です。
19 何事もなき事嬉し黄水仙
疫病や戦争などの無い、平穏無事が何よりだという句でしょうか。同感です。
21 黄水仙流れに沿いて凛と立つ
実感できる、素直な描写の良句です。
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②牛郎選【1、◎4、7、15、20、】
1印むすぶ菩薩の指に春の風
待ちに待った春と穏やかな菩薩像に共感。
◎4建国記念日猫寝息たてており
建国記念日の意味は判りませんが祭日である事に喜びを感じます。
7ビバルディの四季聴く朝や春浅し
高2の孫娘毎日練習をしています。
15魚道に煌めき群れる小鮎かな
琵琶湖の春の風物詩です。
20空仰ぎ群れて首振る黄水仙
花が絵本に出て来る天使を想像します。
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③あらまち一駒選【◎5、1、7,16、22】
5、 臥して知る夫の気配り春の暮(◎)
新婚時代の初々しさが感じ取れる
1、 印むすぶ菩薩の指に春の風
埃も風に飛んで爽やか
7、 ビバルディの四季聴く朝や春浅し
春の交響曲が聴こえてきます
16、 若鮎を指さす子らも元気なり
兎に角元気が伝わる
遺影も嬉しがってる
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④歌子選【2、◎3,4、6、15】
2血だらけの顔上げもどる恋の猫
どうして血だらけになったのだろう。ライバルがいて恋人をめぐって戦ったのだろう。「顔上げもどる」に、ライバルに勝ち、思いを果たせて大満足したのだろうか、などと、あれこれ猫たちの物語を思いめぐらしました。
◎3 何時になるコロナ征伐春彼岸
なかなか長期戦になりそうですね。目に見えないウイルスと人類との闘い、春彼岸の季語がとても効いていると思います。
4 建国記念日猫寝息たてており
口に出してみると、575でもなく17音でもなく、リズミカルにいかないのですが、字面だけで見ると全く違和感がなく、平和なひと時に誘い込まれるのが不思議です。
6 春浅し詩人に成れない鳥も居る
詩心のない自分を揶揄しているものか、何のことを言っているのか、よくわからないのですが、詩人になれない鳥というフレーズが面白いと思いました。
15 魚道(うおみち)に煌めき群れる小鮎かな
魚道に群れて勢いよく遡上しようとしている小鮎の様子が、目に見えるようです。
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⑤法被衣選【1,2,5、12,◎15】
1印むすぶ菩薩の指に春の風
穏やかな光に包まれて佇む菩薩像、平和であって欲しい光景です。
2 血だらけの顔上げもどる恋の猫
猫のバトル、痛々しいけれどどこか逞しい。
頑張れと言いたくなっちゃいますね。
5 臥して知る夫の気配り春の暮
看病される側になって平常時は不愛想?旦那さんの思わぬ優しさが。
12 若鮎は遡上す一葉流るるまま
破調が若鮎の躍動感を捉えています。反対方向に葉が流れ下るという着想の面白さ。
◎15魚道(うおみち)に煌めき群れる小鮎かな
若鮎の遡上を活写しています。
選外
穏やかな表情の遺影
中七の字余りが気になります。
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⑥つゆき選 【3、◎8、11、15】
3 何時になるコロナ征伐春彼岸
時事的な話題がいいと思いました。
◎8 曇り行くフロントガラス春浅し
曇って行くフロントガラスと浅い春との相性がいいと思いました。
11 浅春や伊豆の湯宿の山のもの
山のものと言えば、山椒、ワラビなどでしょうか。
15 魚道(うおみち)に煌めき群れる小鮎かな
「鮎」と言う夏の季語の春ヴァージョン。落ち鮎ともなれば秋の季語。魚道も煌めいて居る様でした。
19 何事もなきこそ嬉し黄水仙
事なかれ主義とはまた違った意味で、静かではあるが、積極的なものを感じます。黄水仙の静謐さともシンクロして居ると思いました。