法
1 開帳の秘仏とうとし梅雨晴間 【祥雲】
牛 駒
2 父の日や吾には遠き記憶かな 【法被衣】
法◎
3 父の日やくの字の姿我が身にも 【牛郎】
4 父の日に花だけ届けドライブに 【あらまち一駒】
祥
5 父の日や航海日誌セピア色 【歌子】
歌◎ 祥
6 梅雨晴間スマホ掲げて風を撮る 【法被衣】
7 お見舞いはケーキに決めて梅雨晴れ間 【牛郎】
歌 祥
8 梅雨晴間波乗り一人海に入る 【あらまち一駒】
駒
9 初めての接吻に似てさくらんぼ 【歌子】
10 おさなごの赤いほっぺやさくらんぼ 【祥雲】
歌 祥◎ 法
12 空の下太宰を読んで桜桃 【あらまち一駒】
13 梅雨晴れ間ペンキ塗りたて小さき庭 【歌子】
駒
14 むらさきの白根葵や夏の尾瀬 【祥雲】
牛◎
15 さくらんぼ写真に遺(のこ)す艶やかさ【法被衣】
歌
16 父の日やボルドーワイン飲む夕べ 【祥雲】
17 蝸牛ベストショットはゆるゆると 【法被衣】
18 母の手の短きクレヨン天花粉 【牛郎】
牛
19 紫陽花や小径にふたり雨あがり 【あらまち一駒】
牛 法 駒◎
20 自粛明け友と連れ立つ夏の宿 【歌子】
選句・鑑賞・作者
歌子選 ◎6,8,11、16
◎6 梅雨晴間スマホ掲げて風を撮る
梅雨晴間にスマホを掲げて花の撮影かなと思ったら「風を撮る」と
は意外な言葉がポーンときて、心打ちぬかれました。
8 梅雨晴間波乗り一人海に入る
梅雨が晴れたとたんに、サーファーが海に入っていく様子、「一人」に待ち切れなかった思いが伝わってきます。
ガラスの器にさす日差し、その器に盛られたさくらんぼ、光や美しい色合いが目に浮かび、絵心はないですが、こういう静物画を描いてみたくなりました。
16 父の日やボルドーワイン飲む夕べ
お子から送られてきたワインでしょうか。感謝と祈り心を温めながら、ワインを手にしている姿が、洋画のワンシーンのように浮かび上がりました。
祥雲選 5、6、8、◎11
5 父の日や航海日誌セピア色
セピア色をした父の航海日誌を読みながら、懐旧に浸っている様子が良いと思います。
6 梅雨晴間スマホ掲げて風を撮る
「風を撮る」が秀逸で、「梅雨晴間」と響き合っていて、良いと思います。
8 梅雨晴間波乗り一人海に入る
湘南の海で一人波乗りをしている景でしょうか。
季語と合っていて良いと思います。
綺麗で静謐な感じのする良句です。
牛郎選 2、◎15、19、20
2、父の日や吾には遠き記憶かな
母の日と比べる吾には遠き記憶かな、なのでしょうか?
◎15、さくらんぼ写真に遺す艶やかさ
遺すを使われたのが艶に関係した女ごころに魅かれました。
19、紫陽花や小径にふたり雨あがり
ありふれた光景だと思うのですが、紫陽花、小径、ふたり、雨あがりがピッタリ。
20、自粛明け友と連れ立つ夏の宿
経験のない自粛、早く終息宣言が出る事を願っています。
法被衣選 1、◎3、11、20
1 開帳の秘仏とうとし梅雨晴間
うっとうしい雨模様の中、仏の加護か束の間の晴れ間のすがすがしさを感じます。
◎3 父の日やくの字の姿我が身にも
年を取らないとわからない年寄りの特権。
否定できない親子の縁の味わいがあります。
ガラスの器に盛ったさくらんぼ、なんとも美しい。
作者の確かな観察眼。
20 自粛明け友と連れ立つ夏の宿
コロナ禍で味わう久々の解放感。
まだ安心できません。
当世ならではの句。
あらまち一駒選 2、9、14、◎20
2 父の日や吾には遠き記憶かな
もういない父を忍んでいい句
9 初めての接吻に似てさくらんぼ
さくらんぼって確かに接吻の感じだ
14 むらさきの白根葵や夏の尾瀬
尾瀬に行きたい歩きたい
◎20 自粛明け友と連れ立つ夏の宿
宿に泊まりたい