②●つだみつぐさん選 【4,17,25,36,55,56】
4 終止符を打って見上げる夏木立
キーボードで長い文章を入力して最後の読点を入力し終わって、
ほっとして見上げた、と読むことは可能だけれど、たぶん違い
ますね。
恋を終わらせたのでしょうか。それでも日々は続いていく。
「打たれた」わけじゃなく、「打った」のだから、あなたは前
に進もうとしている。木立はそれを応援してくれるのでしょうか。
17 夏燕しばしわがもの街の辻
確かに車も人も、交差点を忙しく行き交っているのだけれど、
でも燕は地面の上にいるわけじゃないから、あっちからこっち
へと行かなければいけないわけじゃないから。
25 店番の婆様目で追ふ蝿二匹
すごくヒマそうな店。かといって、ばあさまは奥に入って
蠅叩きを持ってくることはなくて、眠るように時が過ぎていく。
36 小魚を麦藁帽で掬いけり
実際にしたこともないし、たぶん見たこともない情景、
それなのに懐かしいような、もう戻らないとても大切な
時間のような、そんな気がするのは、不思議です。
「原風景」というのでしょうか。
55 夕焼けや壁にもたるる恋心
何があったのでしょう。なぜ壁にもたれているのでしょう。
その恋にまっすぐ飛び込むことができない事情があるので
しょうか。
その人は重すぎるかも知れない恋心を抱えて壁にもたれて
いる、そのことを「恋心が壁にもたれている」とぎりぎり
の表現をしている。これ以上削れない。そして一度詠まれ
てしまうと動かせない。
わたし(つだ)もいつかこうした表現を身につけて、もう
少しましな句が詠めるようになるといいのだけれど。
56 夕焼けや地の果つるまで黄金色
世界が一色に染まる、とてもシンプルです。
説明がいらない、風景画のようなみごとな句だと思います。
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●つだみつぐさんの作品
眼があって素知らぬそぶり蠅叩き | つだ |
脱ぎ捨てて駆け出す童夏燕 | つだ |
夕焼けや昨日のことは昨日のこと | つだ |
小さすぎる麦藁帽子を捨てられず | つだ |
朝摘みしきゅうりあさってには届け | つだ |