●法被衣選 【11.2.1.13.59】
11.湯豆腐や夫はのらりと生返事
なんだか微妙な夫婦の会話。
湯豆腐を口に入れてしゃべれないふりをする?
十七文字の中に長い年月の夫婦の機微を捉えて
いるようでおもしろいです。
2.湯豆腐や昆布も尽きたりひとり酒
出汁の昆布まで食べつくし、後は飲むだけ。
ひとり酒でちゃんと昆布を出汁に使うのは立派です^^)
1.湯豆腐や妻はあぐらをかひてをリ
さあ、食べよう食べよう、という感じが伝わります。
「湯豆腐や」は「湯豆腐に」にするとよりその感じが
増すようにも思いました。
13.白き手が湯豆腐掬ふ朱の蓮華
白と朱の色彩の対比が鮮やかです。
寄せ鍋ではこうはいきませんね。
白き手の持ち主は仲居さんでしょうか?
それとも・・・^0^)
59.霧降りて谷の集落まだ明けず
音のしない幽玄な感じ、いただきました。
★その他気になった句
62.宵闇に犬吼えて月出でん
犬の祖先は狼とか。月に反応しますね、面白い。
4.宵闇に靴音ばかり過ぎていく
待ち人来たらず、でしょうか。
31.今晩は夢を見そうな干し布団
布団が干されている光景は気持ちもほんわかしますね。
着眼点がすばらしいです。
盗作
今晩の夢の香放ち干し布団
45.窓洗ひ鉢を片付け冬に入る
淡々と冬支度の作業をしている様が詠まれていると思います。
句の黙々さに好感が持てます。
51.宵闇の深くまします鎮守さま
夜の鎮守さま、森に囲まれて黒く静まりかえって。
これも「宵闇の」か「宵闇に」か・・・。
宵闇の鎮守さま、か、宵闇に深く、か、焦点が違ってくるように思えます。
70.落葉が閉鎖予告す峠道
「らくよう」と読むと思いますが、最初「おちば」と読んでしまいました
。
道路に積もった落ち葉が先の峠道の閉鎖を告げている様子と解釈
しましたが、それとも裸になった木々の姿、もしくは舞い落ちる落葉
がそれを示しているのか、どちらでしょう?
前者であればさっそく盗作
枯れ落ち葉閉鎖を告げし峠道
俳句は17文字しかないので一字の持つ役割はとても大きいと思う今日この頃。
一字を変えてみて内容を味わうのも俳句の面白みであると思います。
●法被衣の作品
8.湯豆腐はタクタクタクと踊りけり 【法被衣】
21.湯豆腐のこんぶの味の頼りなき 【法被衣】
32.湯豆腐や土鍋の底の昆布あおし 【法被衣】
41.宵闇を楽しむゆとりなく生きる 【法被衣】
48.宵闇を電車の窓に迎えおり 【法被衣】
56.仕事終え最終の声神無月 【法被衣】
61.人影も寂しき雨の七五三 【法被衣】