先日、柏原民雨先生という方から、「発句と俳句」という講演を伺う機会がありました。
最初からすべて書くことができればいいのですが、長くなりますので、その中で、特に知っておかなくてはいけない基本的なことについて、メモしてきたことを、記したいと思います。
(今更・・と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、前半の発句の歴史などを省いて、メモ書きの清書。誤字や転記間違いなどあるかもしれません。へんな所はぜひご指摘ください)
発句(ほっく)と俳句
俳句の構造は、有季 定型、切れ この三つから成り立つ。
有季とは、季語を1つ入れる、季重なりは極力さける。
定型とは五七五の音律である、字余り字足らずは極力さける。
切れ (連歌の発句は独立鑑賞にたえること)
発句は必ず言い切るべし順徳院の「八雲御抄」の連歌
の項)
「や、かな、し、もがな、ぞ、か、
よ、けり、らん、つ、ぬ、ず、じ、
せ、れ、へ、け、いかに」
切れ字に用ふる時は四十八皆切字なり。
(去来の 「去来抄」)
俳句の二つの基本形
一物仕立 (直叙)
○○○○○ ○○○○○○○ ○○○○○■(切れ一つ)
二物衝撃 (取合わせ)
○○○○○ ○○○○○○○▲○○○○○■
(切れ二つ)
切れの二つの意味
■一句の独立性=両者の型に共通
▲俳句固有の切れ=取合わせによる詩情
俳句の技法
写生(子規による俳句確信のための手法)
寄物陳思、即物具象、モノ俳句(事はよまずモノを 詠め) 瞬間切断、
叙述の文芸ではなく提示の文芸、感興を物に託して間接 化すること
切れの問題
《きれる》
体言留 (名詞留、名詞で言い切る)
苛立つる雄松の幹弓の的■
▲と■は切れ
尻に差す競馬新聞▲雪催■
終止留 (動詞、助動詞、形容詞、形容動詞の終止形で
言い切る)
観音の体内にゐて初音聞く■
蛇消えしあと草むらに風立ちぬ■
(助動詞の終止留め)
覗く顔映して城の井の涼し■
連体留 (用言の連体形で切る)(コトヨの省略)
大道芸薔薇差す帽に銭受くる■ (銭を受く
でもよい)
助動詞留 (終助詞、間投助詞、係助詞の文末用法、その他)
方丈の大屋根沈む花野かな■ (助動詞)
鉄線の咲きて夕風足もとに■ (省略語のわかる格助詞)
《切れない》
連用留 (て留めと同じくつぎの用言が不明)
(前句付に由来する川柳の形で、発句ではない)
①叱られてゐて枇杷の種ぼそと吐き
(こうなれば川柳)
→ 吐く (こうなると俳句)
②展示より下ぐればどっと菊崩れ→ 菊崩る
③渥美線青田の原に出て軽く → 軽し
(ただし倒置法の句は可)
(連用形は、次の用言で、「で、どうなった?」 というのは川柳)
④種浸す■浮桟橋の橋に結はへ
(一物仕立てではないのでこれはよい。
用言につながっている連用形の場合は良い)
⑤留学生着く■強東風を頬に受け
助詞留(特に、て留)
よく見かけるが、発句の形ではない
①行く春の西行像に顔寄せて → 寄せり
②義経の隠れ里より虹立ちて → 立てり
③辛崎の松は花より朧にて(芭蕉)・・・
一生に一句くらいはいいがて留めはNG
(芭蕉は、指摘されると、何もこたえずにやに や笑っていただけだそうです)
ただし、倒置法の句は可
④大根干す■良寛堂の柵借りて
⑤城涼し■鳶の高さに登り来て
二句一章の切れについて 三段切れはだめ、発句以来のきまり(途中の切れは一つ)
①短日の餌あましたる象の檻■
②短日の餌あましたり▲象の檻■・・・・・
二句一章となりこれはかまわない
③短日や▲餌あましたり▲象の檻■・・・・
これは三段切れとなるのでNG
④白山へ凧押し上ぐる海の風■・・・・・・
一物仕立てでありこれはOK
⑤白山へ凧を押し上ぐ▲海の風■・・・・・
二句一章でOK
⑥白山や▲凧を押し上ぐ▲海の風■・・・・
三段切れとなるのでNG
二句一章のつもりが三段切れになっているもの
①名月や▲さざ波の寄す▲池の端■
②爽やかや▲タラップ降る▲親子連れ■
→降るる
③綿虫や▲彫り文字赤し▲力石■
→赤き
(対比やリフレインは可とする)
①一茶句碑▲山頭火句碑▲寺薄暑■
②男滝▲女滝▲子滝▲孫滝▲皆海へ■
③目には青葉▲山ほととぎす▲はつ松魚■
素堂